日本冷蔵倉庫協会が提供している統計データに『20**年**月分 12都市データ』があり、そのデータ中に在庫率があります。2021年08月分では、東京都で35.8%と在庫率が表示されています。
単純に考えると、100%までまだ64%の余裕があると思いますが、実際はそれほど多くの空きがある状態ではありません。

その理由としては、

  1. 伝統的に用いられてきた「在庫率」は、冷凍水産物など比重の大きな貨物を前提として冷蔵倉庫の収容水準を示してきたところ、近年では加工食品など嵩高(かさだか)の貨物が増えるなど構成が変わってきていること
  2. 従来は貨物を倉庫に詰め込んでいたところ、近年ではパレットに積み付けた貨物をフォークリフトで棚に入れる方式が主流となり、棚の上下スペースやフォークリフト作業用の通路ほかのスペースを要するようになっていること

等があります。

関係の方々に庫腹状況についての一つの目安となるよう、一定の仮定に基づき、収容可能なスペースに対する貨物の埋まり具合を示す「庫腹占有率(試算)」をお示しします。具体的な計算方法は下記をご覧ください。これは、あくまで目安であり、実際の庫腹の状況、受け入れの可能性は各冷蔵倉庫にお問い合わせ願います。
なお、冷蔵倉庫の統計は行政上、実務上、重量ベースでとられてきており、その変更は難しいものがあります。

【庫腹占有率(試算)の計算方法】

倉庫業を始めるに当たって、営業冷蔵倉庫は国土交通省へ倉庫の立方体容積を『所管容積』として届け出ます。
この立方体をトン数換算したものを『設備トン』と称しますが[所管容積×0.4]で求められます。この0.4は、戦前から以西トロール漁業で使用していた木製のトロ函に魚を入れた時の単位容積当りの重量換算への換算率です。(よくあるご質問「設備トンとは?」参照。)
毎月集計している品目別在庫数値はトン単位で報告を受け、単純に在庫率を求めると、[在庫率=当月末在庫数量÷(所管容積×0.4)]で求められます。
届け出た立方体に 100% になるまで貨物を保管することは可能ですが、その場合、冷蔵倉庫の中に隙間(通路)がなくなり、トラックの待機時間問題等が発生してしまいます。

<冷蔵倉庫の最大収容可能容積率について(20,000設備トンモデル)>

[冷蔵倉庫内イメージ平面図]               [パレットイメージ図]

  1. 最大パレット収容数  ・・・
    [42列×(3+6+3)行×3段]-[7×3×3柱型]=1,449パレット
    1パレット当り最大積付容積・・・
    (1.2m-0.05m)×(1.0m-0.05m)×(1.6m-0.12m-0.1m)=1.5m3
    ⇒ 最大収容容積 A×B=2,173.5m3×10室=21,735m3・・・<1>
  2. 冷蔵倉庫設備能力
    [{(1.2+0.1)×42枚}+(0.3×2)]×[{(1.0+0.05)×12枚}+(2.6m×2本)+0.3×2)]
    ×5.5m×0.9≒5,000m3  (2,000設備トン)
    (1室5,000m3×2室/1フロア)×5フロア=50,000m3(20,000設備トン)・・・<2>
  3. 最大収容可能容積率 <1>÷<2>=43.47%
  4. 実運用時最大収容可能容積率・・・(在庫スペース+容積貸スペース)
    平均パレット当り積付率=パレット当最大積付×0.9(0.85~0.95)
    入出庫作業パレット数=収容パレット数×(年回転数÷年間営業日数)
    (日々の作業に必要ロススペース)  6.2回÷250日≒0.025
    ※2018年実態調査加重平均回転数 6.2回 

    ⇒ 43.47%×0.9×(1-0.025)≒ 38% 

  • 【参考】2018年冷蔵倉庫実態調査(加重平均)による
    容積収容率=在庫収容/設備容積=(在庫t÷貨物比重)/(設備トン×2.5) 

    =在庫率(31.8%)÷2.5÷比重(0.429)=29.65%

※庫腹占有率(試算)
協会は、各年毎に重量ベースで品目別の在庫量をとっていますが、これを容積に換算するため、経験的に得られている以下の品目別想定比重を用います。

品目別想定比重:水産物(0.45) 畜産物(0.5) 農産物(0.3) 冷凍食品(0.2) その他(0.4)
※横浜は濃縮果汁が多いので農産物は 0.5 で計算

これにより、各都市・各品目の所管容積に対する比率が出ますが、その合計の※の実運用時最大収容可能容積率に対する比率を『庫腹占有率(試算)』とします。
あくまで、全国一律、一定の仮定に基づく試算ですので、100% を超えることもありますが、一つの目安としてご理解願います。